鳥取銀行

医療支援

case03

島根県出雲市
イーハデンタルクリニック倉塚歯科医院

倉塚 啓

歯科医になろうと思ったきっかけは何ですか?

きっかけというほどのことはないですが、父も祖父も歯医者をしていて、自宅がクリニックに隣接していたこともあり、小さい頃から働く姿を見てきたことで、なんとなく進路が決まっていたと思います。あとは、僕は手先が器用なので、細かい作業は好きなんですよね。

大学ではどういったことを学びましたか?

僕は研修医時代、補綴(ほてつ)※科、保存科、歯周病科、矯正科、口腔外科などの選択肢があるなかで、研修先に補綴科を選択しました。

※補綴(ほてつ):見た目や噛み合わせを人工的な入れ歯等で補う歯科治療。入れ歯、クラウン、ブリッジ、インプラントなどの方法がある。

補綴科を選んだ理由は、一般歯科に近い実践的な分野が補綴科だったことと、大学の特色がある科だったからです。というのも、大学の補綴科は、歯科技工士がするような入れ歯等の製作もしていました。授業が終わって、18時ぐらいから作りはじめて、気づいたら25時…ということも、ざらにありました。

今考えると大変な環境だったわけですが、歯科医全体で見ても、歯科技工士と同じレベルの製作経験がある歯科医は少ないし、自分が目標とするようなOBのすごい先生は、一般歯科だけでなく製作もできる方が多かったです。現在、患者さんの治療の方法を考えるときにも、製作の知識があることが大きくプラスになっていると感じます。

開業のきっかけ

もともと実家に戻る気持ちはそんなになかったのですが、父も高齢になり、いよいよ歯科医院の経営が危なくなってきたことから、親を助けるために地元に帰りました。

自分にも子どもができて、両親を放ってはおけなかったし、このままだと(旧)倉塚歯科医院は無くなってしまうという危機感がありました。自分もいろいろな経験を積んできて、今の自分ならできると自信を持って帰ってきました。

経営の立て直しにあたり、まずは現状把握から始めました。父からヒアリングしていた経営の状況と実態とは乖離しており、既存の設備・機械や、売上や経費などの数字の実情と、来院される患者さんの様子などを1年程かけて把握していきました。

結果として分かったことは、機械・設備やクリニックの建物は老朽化が進んでいて、建て替えが必要ということでした。設備の更新やクリニックの新築は、たいへんお金がかかることなので、リニューアル後に患者さんにどれくらい来院してもらえるのか、将来性を見極めることが重要でした。旧医院での治療は、古い設備により十分な治療ができていなかった部分もあったのですが、それでも新規で来院される患者さんがいて、自分が戻ってきてから患者数が伸びたこともあり、これなら可能だと判断し、資金の借入のために金融機関に相談することにしました。

鳥取銀行の支援内容

相談した金融機関からは、資金調達は難しいという反応だったため、他の金融機関にも相談してみようと思い、鳥取銀行に相談しました。時々、「無理なお願いをしているんじゃないか」と思うこともあったのですが、担当の方がなんとか実現可能な方向に持っていこうと話をしてくれました。当初から現地での建て替えを考えていたのですが、開業にあたっての理想的な形はイメージできていたものの、実際にどのように手続きを進めていったらよいかということは全く分かりませんでした。そうしたなかで、実現可能なスキームを提案してもらい、借入の整理や、税理士などの専門家を紹介してもらうなど、色々とフォローしてもらえた点がよかったです。

開業準備で大変だったことは何ですか?

大変だったこととしては、両親との交渉でした。父にも、これまで何十年も歯科医院の運営に尽力してきたという思いがありますから、リニューアルにはかなり反対されましたし、多額の投資をして新築して、成功するはずがないと言われていました。でも、父が融資を受けた当時と金利も差がありますし、診療スタイルも異なります。出雲というエリアも、集患が見込める市場だと捉えていたので、ひたすら説明して時間をかけて説得し、最終的には納得してもらいました。

大変でしたが、僕としては、この話が進まなければ生活のために実家の医院を出ていくしかなく、父は医院を手放して他人に渡すか、息子に渡すかしかないのですから、なんとしても理解してもらうよりほかないという覚悟で臨んでいました。

開業したクリニックのポイント

当院は、最先端の歯科医療を提供しています。充実した設備を揃え、診察室を広くゆったりとした空間にすることで、患者さんにしっかり話を聞いていただける場所を目指しました。器具や画像を使って、患者さんにわかりやすく説明し、現在の歯の状態や、治療の方針・内容を理解していただくことを重視しています。歯の治療と同じくらい、患者さんのセルフケアや予防が大切です。患者さんにきちんと納得していただくことで、定期的な来院につながり、患者さんにも、歯科医の僕自身にも負担が少ない良い循環をつくりたいと思っています。

都市部と地方での生活面での変化

子育てには田舎が良いと感じます。都市部に比べて明らかに空気が良いし、人柄もよく、治安も良いです。また、この辺りは20時にはすっかり静かになって車も通らず、夜が早くて健康的です。地元に帰ってきて、人間味のある生活を取り戻したと感じています。また、広いクリニックにできるのは、地方のメリットでもありますね。

開業したい方へのメッセージをお願いします

開業は、早めがいいと思います。今の歯科診療は、患者さんが少なくなっています。安定した経営のためには、リピーターの獲得がとても重要で、こればかりは一定の時間が必要になります。

また、目標をもって働くことも大事です。勤務医をしているなら、きちんと収入が得られる働き方ができているか、今できていないなら、今後収入が上がるような働き方に変えていけるか、もしくは開業に向けて必要な技術などが身に付けられているかなどを、常に考えることが必要だと思います。僕は勤務医時代、常に「1年後にはこうなりたい」など短期的に目標をつくって、達成するようにしていました。だから、目標を持つことが、やはり重要だと思いますね。

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