鳥取銀行

医療支援

case04

鳥取県境港市
もりわき整形外科クリニック

森脇 健太

医師になりたいと思ったきっかけは何ですか?

医者になりたいと思ったのは、小学生の頃からだったと思います。私の兄が先天性の疾患があって、子どもながらに「兄の病気を治したい」と思っていたのがきっかけです。早い段階で医者になりたいという意識がありましたが、学生時代は部活に打ち込んでいましたね(※森脇先生は米子東高校バスケ部のキャプテンを務めていました)。とはいえ、医者になりたいという気持ちはずっとブレなかったので、受験期には部活の仲間や友達の助けもあって、勉強を頑張ることができました。

整形外科を選ばれた理由を教えてください

整形外科を目指したのは、他の外科が「がん(悪性腫瘍)」の切除など、悪くなった細胞や組織を“除去”する手術が中心となるのに対して、整形外科は、骨や筋などを支えて“再建”する、言ってみれば、“機能を回復する”手術も多かったので、そこに魅力を感じました。

あとは、やはり今後の社会状況を踏まえると、どんどん高齢化が進み、ニーズが高まる医療分野でもあったことから、「手術をする外科医になりたい」という自分の理想と、社会から求められる診療分野であるという現実の両面を踏まえて、整形外科にしました。あとは、私が生粋のおばあちゃんっ子なので、中高齢者の患者さんを診るのは向いているんだと思います(笑)。

整形外科と一口にいっても色々と専門が分かれていて、脊髄や関節、手の専門の先生などもいらっしゃいますが、私はサブスペシャルティ(専門分野)を外科と内科の両方を極めたいと考えていました。外科的な分野では股関節の手術、内科的な分野では骨粗しょう症が専門です。

一般病院の整形外科の先生は、手術でとても忙しく、骨粗しょう症のように服薬や注射、リハビリなどの治療も含む内科的な治療にまで手が回らない印象でした。クリニック開業にあたっては、こうした先生方の負担軽減に少しでもお役に立てればと思っています。

開業を決意した理由

病院の整形外科は受診される患者さんの数も多く、いろいろなことを学びました。日々、骨折の患者さんを診る中で、「これはおかしいな。どうしてこんなに骨折が多いんだろう?」と考えるようになり、骨折の原因を解明することに意識が向きました。若い頃は、どんな症例でも手術できると思っていたのですが、手術は高齢の患者さんの体には負担が大きく、リハビリも頑張らなければなりません。退院しても、ADL(日常生活動作レベル)が下がったことを理由に元の生活に戻ることができず、高齢者介護施設に行くことになるケースも多いです。

そういった現実を目の当たりにしたことで、骨折の原因となる「骨粗しょう症」の怖さや予防の重要性の啓発に、積極的に取り組むようになりました。三朝温泉病院に勤務していた時期は、自治体から依頼を受けて、健康セミナーや講演などでお話しすることもあり、健康寿命を延伸して要介護者を減らしたい自治体のニーズと、私の活動がマッチしたのだと思います。

現在、境港市は市民の骨密度検診を行っており、60歳、65歳、70歳の女性は、腰椎の骨密度の検査(DXA法)が受けられます。これは自治体の検診でも珍しいことで、骨粗しょう症予防に対する意識の向上に地元ながら大変感銘を受けました。当院は、その骨密度検診の委託機関になっておりますので、自治体とも協働して、地域の骨折予防をしていきたいと考えています。

骨粗しょう症は自覚症状もなく、ほとんどが骨折するまでわからない病気です。検査で骨粗しょう症がわかった患者さんの多くは「私は骨が丈夫だと思っていた」とおっしゃいますし、検査で早めに気づけることが重要ですよね。

勤務医になった当初は手術がしたかったので、手術をすることに重点を置いていたのですが、外来や入院患者さんの対応等で忙しく、次第に、『骨粗しょう症の治療も含め、患者さん一人ひとりを充分にフォローしたければ、開業するしかない』と考えるようになりました。また、いずれは地元の境港に戻って地域医療に貢献したいと思っていたので、開業を決心しました。

開業を決意してからの行動、鳥取銀行の支援について

まずは、子どもの頃から懇意にしていた経営者さんに話を聞きに行きました。開業すると、医療とは全く異なる経営の分野を勉強しなくてはいけません。その点、良いお手本が身近にいました。鳥取銀行もその経営者さんからご紹介いただきました。(鳥取銀行は)右も左もわからない段階から、常に相談に乗ってくださり、業者を紹介していただいたり、収支シミュレーションをしていただいたりと、担当の方にもたくさん助けていただいて、とりぎんさんがいなかったら開業は難しかったと思います。

また、開業医が集まる情報交換会に参加して、色々と指導していただいたり、米子・松江の整形外科の先生のクリニックを訪問して見学させていただいたりして、イメージを固めていきました。

開業にあたり不安だったこと

そうですね、不安だったこと…やはり、プレイングマネージャーになるので、医療と経営、そしてスタッフの生活を守る雇用、これら3つをちゃんと両立できるかな?というところが不安でした。でも、いろいろな方に助けていただいていましたし、開業準備は不安より楽しみの方が大きかったです。ゼロから創り出すベンチャー的な感覚を楽しんでいました。(笑)

クリニックのこだわりポイント

当院は、待合室を広く開放的に作っています。病院はどうしても待ち時間が長くなることがあるので、待つ間もゆったりとリラックスしてもらえる環境にしたくて、明るさやBGMに気を配っています。あとは、スタッフが働きやすい環境となるように、ということも意識しました。

開業医となり変わったことはなんですか?

そうですね、他の開業医の先生も言っておられたことですけど、当直がなくなって生活リズムが整い、体が楽になりました。いま私は41なんですけど、今後、40代、50代となっていくにつれて、当直がある生活を続けるのはなかなか大変だなと思っていた部分もありました。開業医となった今は、経営のことなどいろいろ考えなければならないことも多いですが、休みの日は、家族と過ごす時間も多くなりました。子どもが今年1歳になるのですが、一緒に過ごす時間がもてて良かったと思います。

開業医は勤務医より運動量が減るので、クリニックの近くの市民プールで水泳をしたり、近所をランニングしたりして運動しています。学生時代からずっとスポーツをしてきたこともあって、体を動かさないと、何だか気持ち悪くて(笑)。体を動かすと、頭のリフレッシュにもなりますし、開業医は体が資本なので、健康には気をつけています。

あとは、故郷の境港で開業したこともあり、患者さんが親の知り合いだったりします。通院されている患者さんから紹介されて来院される方も多く、人と人とのつながりの強さを感じます。良いクリニックがあると紹介されて来たと言われると、気が抜けないですね(笑)。先日は、同級生が来てくれて、勤務医時代にはなかったことだなと思いました。有難いことですよね。私も同級生たちも、これから一緒に年をとって、腰が痛くなったり、脚が痛くなったりするのを診てあげられると思うと、やりがいがあります。

最後にこれから開業しようと考える先生方へ
アドバイスをお願いします

開業するのは大変なことで、責任もありますが、自分の思い描いていた医療が実現できます。経営を勉強する上で、医療の世界だけではなく、いろんな業種の方と繋がることができるので、社会勉強にもなり、人間として成長できると思います。開業したいと考える先生には後悔のないように頑張っていただきたいと思いますし、開業することを楽しんで頂きたいと思います。

もりわき整形外科クリニック

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