鳥取銀行

医療支援

case06

島根県出雲市
おおた皮膚科クリニック

太田 征孝

太田先生は千葉県のご出身とのことですが、子ども時代はどんな子どもさんでしたか?

子どもの頃は、よく走り回っていました。今では大問題になりそうですけど、他人の民家に入って果物をとったり、海で花火したり…千葉といっても田舎だったので、のびのびと過ごしていました。

医師になろうと思った理由は何ですか?

子どもの頃にお世話になっていたかかりつけ医の先生がいたのですが、その先生の立派な感じというか、なんとなく憧れを感じていたのが最初のきっかけだったと思います。

診療科の特徴や、診察で意識していることは何ですか?

島根県立中央病院での研修医時代に、皮膚科の研修の中で診断の面白さを感じました。皮膚科の診断は、「推理」なんですよ。目に見える症状から原因を推察して考えます。たとえば、顔や首の周りに湿疹が出ている患者さんがいるとしたら、その湿疹の分布や、症状が現れはじめた時期を聞いて、それが外的要因なのか、内的要因なのかを考えます。
5月中旬頃から湿疹が出ていて、目のかゆみもあるとなれば、5月から10月に飛散するイネ科のアレルギーを疑ったりします。皮膚科の症状は、患者さんの周辺環境が影響していることが多く、生活に密着しています。たとえば、患者さんのお家の庭の植物は何が生えていて、どの植物にどんな毛虫がつきやすいか…といったことですね。患者さんの生活習慣が症状に深くかかわってきます。そのため患者さんとの問診をスタッフと共に重視して診療を行っています。

また皮膚科は塗り薬が中心の診療科でもあります。内科なら飲み薬が処方され、患者さんの「薬を飲む」という行動はワンアクションで済みますが、皮膚科の治療の中心である塗り薬は、患者さんにとって負担のあるものです。患者さんの“疾患に伴う生活の不便さ”と、“治療に伴う生活の不便さ”とをうまく調整することを意識しています。 また、患者さんが多い診療科でもあるので、一人の患者さんからしっかり話を聞いて診断することと、多くの患者さんに医療を提供することを両立しなくてはなりません。そのためには、いかに効率的に診療し、患者さんの居心地が悪くならないように短時間で診断できるかということも意識しています。

島根大学で12年間勤務した中で、一般皮膚科から皮膚外科に異動し、皮膚がんや悪性黒色腫を扱う仕事ができたのは、経験として大きかったです。皮膚科は基本的に、患者さんの命に関わる症例は少ない分野ですが、それでも皮膚がんや悪性腫瘍などの命に関わる病気はあり、治療法も手術や化学療法を用います。皮膚外科での経験があるので、「おおた皮膚科」に皮膚腫瘍の患者さんが来た時に、手術の流れや治療に必要な期間等を説明することができます。

病院との連携では、近隣にある斐川生協病院や島根大学病院との連携を行っています。当院の患者さんでレントゲン撮影が必要な時に紹介したり、反対にアトピー性皮膚炎が治りにくいという患者さんを当院に紹介してもらい、治療にあたったりしています。

開業に至るまでの経緯は?

開業は、島根大学病院で助教をしていた頃から考えていました。大学では、医師は「研究」と「臨床」と「教育」という3つのことをしなくてはいけません。私は臨床と教育には注力していましたが、研究は苦手で…でもやらなくてはいけないという切迫感はあるわけです。次第に臨床に専念したいと考えるようになり、妻を説得して、開業することに決めました。
開業を決めてまず最初に、市内の開業医の先生に相談しました。クリニックの見学に行かせてもらったり、いろいろと話を聞いたりしました。基本的には、“そんなに心配することはない”と背中を押してもらうような形でした。開業の準備は、開業支援サービスを提供している医療卸の会社や、鳥取銀行に相談しました。
鳥取銀行に事業計画を持って行って相談したところ、前向きに手伝ってくれる姿勢を感じたことがうれしかったです。開業に向けて、一緒に残りのタスクをチェックしてくれるなど、担当の方にはお世話になりました。私からは、どんなクリニックにしたいかを伝えて、それを形にしてもらったという印象です。周囲の皆さんのサポートがあったため、開業準備はスムーズに進みました。

開業にあたっての不安は?

開業にあたり不安に感じていたことは、やはり「患者さんが来てくれるかな?」ということでした。また、インターネットで調べてみると、職場の人間関係のトラブルが一番怖いなという印象がありました。職場環境を良いものとするために、スタッフが余裕のある働き方ができるように意識しています。皮膚科で働くからこそ得られる知識等をモチベーションに、心理的安心感を持って働けることが重視しています。また給与面でも、年1回は必ず昇給を設けて生活面でも不安がないようにし、残業も基本的になくしています。
火曜の午後に私が往診に出ている間に、事務作業の時間にあてて効率的に仕事をしてもらっています。同行するスタッフとはランチをしています。スタッフミーティングを兼ねており、円滑なコミュニケーションに役立っているのではないかと思います。

開業する前と後で、生活の変化はありましたか?

平日の帰宅時間は変わらないですね。診察が18時に終わって、その後に事務作業等をしていると、帰宅は19時過ぎぐらいになります。ただ、毎週木曜の午後は休診なので、早めに帰って夕飯を作ったり、土曜の午後には体を休めたり、日曜は子どもと遊んだりと、家族との時間を持つようにしています。
仕事にはメリハリがつけられるようになりましたが妻の協力あってのものだと思います。

大学で勤務していた頃は、病棟医長をしていたこともあって、病院からの連絡にはいつでも応じなければならないほか、緊急連絡以外にも何か困ったことがあると病院のスタッフから連絡があったため、安心して休めない環境でした。

火曜の午後は往診をされていますが、皮膚科の往診は珍しいですね。

往診というよりは、訪問診療という形態なのですが、施設に入所されている高齢者の方は、“病院に行くほどではないけれど、医師が来てくれるなら相談したい”ということはいっぱいあるので、そのニーズに応えたいと思って、訪問診療を続けています。施設に来られる訪問診療の先生たちとも連携しながら、現在は6ヶ所ぐらいの施設に訪問しています。

「おおた皮膚科」クリニックのコンセプトは何ですか?

家族全員が受診しやすいクリニックにしたいと思い、子どもやお年寄りが親しみやすいような内装にしています。柔らかいタッチで描かれたイラストを飾ったり、待合室を広くとったり…待合室のカウンターでは、よく小学生が宿題をやっています。3つある診察室も家族全員が入れるように広い空間にしています。
また、待ち時間が患者さんの満足度に大きく影響するため、待ち時間を極力短くするようにweb予約を活用しています。現在は、平均約100人/日の患者さんを診察していますが、診察時間は増やせないため、患者さんと接する短い時間を、いかに効率的に、密度の高い診療にしていくかを意識しています。患者さんの呼び入れ、薬や処置などは看護師に行ってもらい、私は治療方針の検討や説明に時間を使えるように工夫しています。

開業したい方に向けたメッセージ

自分がどんな診療がしたいか、それをどう実現していくかということが重要だと思います。周囲はサポートしてくれるので、自分が培ってきたスキルや経験を踏まえて、自分のできること、これからやりたいことを定めていくのが良いと思います。 クリニックの中で目標を共有して、スタッフと意見を交わしやすい関係性をつくることが必要だと思います。

おおた皮膚科クリニック

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