

case07
鳥取県米子市
米子南整形外科クリニック
築谷 康人
開業して1年、最近の状況
開業から現在まで、予想以上に多くの患者さんに来院いただいており、既にクリニックが手狭になってきています。開業から約1年半が経った2026年4月時点では、200人/日の来院があり、当初の事業プランと比べても予想外の結果となりました。地域の多くの皆さんに来院いただいていると感じる一方で、予約の取りにくさや駐車場の確保などに課題を感じている部分もあります。
開業しようと思った経緯
総合病院での勤務医時代は、主に手術を行ってきましたが、整形外科の治療において、手術はあくまで手段のひとつです。もちろん手術によって治る方も多いですが、必ずしも症状の改善につながらないケースもあります。患者さんにとっては、手術の前後の時間―症状の初期段階から術後のリハビリまで―の時間の方が長いのです。その長い時間の治療の質を向上させるためには、理学療法士(PT)のスタッフと2人3脚で行っていく必要がありますし、病気の予防やメディカルチェックなどにも取り組みたいと思うと、総合病院よりもクリニックという形態の方が適していると感じたのが開業の経緯でした。
手術経験があることで、手術の要否も含め、患者さんに合った治療法が提案できますし、治療からリハビリまでの道筋も作りやすいのがクリニックの良い点だと感じています。そもそもどんな治療方法があるかということを患者さんに提示して、患者さんの選択肢を増やすことで、この地域の中で適切な整形外科治療を導いていける存在になれればと思っています。そのため、当院では通常の治療の他に、再生医療なども積極的に取り扱っています。
開業にあたり不安だったこと
やはり「商い」ですね。ちゃんと経営していけるのかという不安はありました。医者は医学の知識はありますが、開業の知識をもともと持っているわけではありません。私も勉強してみようかと本を開いてみたこともあるのですが、途中で読むのをやめてしまいましたし、そこは専門家のアドバイスを受けるべき部分だと思います。


金融機関に相談したのは、もちろん資金調達のためでしたが、最終的には開業支援の充実度で鳥取銀行を選びました。開業の地として探している土地に関する情報提供や、税理士などの専門家の紹介、医療卸などの企業とのマッチングなどを行ってもらいました。さまざまな情報を提供してもらうなかで、廃業を希望している米子市の整形外科クリニックとのマッチングによる事業承継にもつながりました。
事業承継という形で行った開業、事前のイメージと実際のところ
もともと開業の場所として、この地域(米子市道笑町周辺)で土地を探していました。過去に勤務していた山陰労災病院や、鳥取大学医学部附属大学病院も近く、インターにも国道にも近いため交通の便が良いなど、立地的な面でも望ましかったエリアです。なかなか土地の空きが出なかったところで、銀行から事業承継の話を聞き、タイミング良く承継という形での開業が決まりました。クリニック周辺は比較的新しい街で、住宅街もあり、学校も近くにあるため、10代など若い世代の患者さんも多く来院されています。
事業承継して良かったこと
事業承継の良かった点は、クリニックの土地・建物へのコストを抑えられたことです。結果的に、当初想定していた開業の予算を、治療のための医療機器の導入や、雇用するスタッフの人件費、福利厚生費などの環境整備にしっかり投資できました。通常は、決められた予算の範囲内で、土地・建物、設備、機器などに資金を使っていき、どこかで節約しなくてはいけない部分も出てくると思いますが、私の場合は惜しみなく初期投資しようと決めて、質の高いものを揃えられたことで、開院当初から多くの患者さんの来院があるなど、好循環を生み出せたと思っています。
たとえば、美容医療のための設備(ジェントルマックスプロ)は、最初に導入しなければ、後から導入することはなかったと思いますし、衝撃波を体外から患部に照射して治療促進を図る体外衝撃波治療機(ESWT)を行う「集束型体外衝撃波治療器」も、山陰地方で導入しているクリニックは当院だけではないかと思っています。“できることを後からするより、今した方がよい”という精神で、最先端の機器の導入を決めました。
また、承継前の整形外科クリニックが当地で長く地域に根差して運営されていたことで、"ここに整形外科がある"という地元の方のイメージも定着していました。クリニックの近隣に薬局が複数あることや、院内に広いリハビリ室があったことも、こちらでの開業にプラスとなるポイントでした。
事業承継で大変だったこと(苦労したこと)
大変だったことは、承継開始時の手続きの煩雑さや、先方とのコミュニケーションでしょうか。ただ、事業承継の手続きについては、鳥取銀行の事業承継・M&Aチームにも支援してもらい、なんとか申請書類等を揃えることができました。承継元とのやりとりについても、第三者に介在してもらったことで、スムーズに進んだと思っています。先方と一対一で直接交渉していたら、途中で諦めていたかもしれません。
また、建物の建築当初の断熱性能やキャパシティについては、どうにもならない部分として受け入れています。とはいえ、新規開業と比較して諦めたことはあまりなく、コスト面なども含めて、むしろメリットの方が大きいと感じています。承継によって、開業に良いスタートを切ることができたと思っています。
今後の展望
現在PTは7人で、近いうちにもう1人増員する予定としており、リハビリの支援体制はより充実させて、多くの患者さんに対応できるように環境を整えていきます。リハビリが必要ない患者さんはいないので、痛みや動かしにくさが繰り返すことを防げるよう、リハビリと同時に日常の姿勢や動かし方などの指導を通じて、再発防止をおこないたいです。また、MRIの導入も考えており、検査が必要な患者さんに、総合病院を紹介しなくても、クリニックで治療が完結するようなケースを増やしていければと考えています。
これから開業する先生へのメッセージ
開業したいという思いがあるなら、まずは動き出して、詳しい人に相談するのがいいと思います。いつかは開業したいな、と漠然と考えているけれど、準備を始める入り口が見つからない人も多いと思いますが、プランを具体化するために、情報収集やサポートを得られるよう行動することをおすすめします。
私は、開業の土地を探していた期間も長かったため、今回を逃したらできないだろうと思い、この場所で開業に踏み切りました。結果的に、開院当初から多くの患者さんに来院いただき、当初の事業目標も早々に達成できたことですし、我ながら、タイミングの見極めが良かったと感じています。

米子南整形外科クリニック